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すると、黒髪の青年が恭しく王冠を両手で持つや――なんとそれを、愛菜の頭に乗せようとしているではないか。
(……あれを愛菜に被せたら絶対に駄目な気がする……!)
己の直感に従い、その場から駆け出す切夜。
彼は、今まさに妹の頭に王冠を乗せようとする青年に全力で飛び掛かった。
「なっ……?!何をする!!」
切夜に不意打ちで飛び付かれ、バランスを崩し、その場に腰をつく青年。
「神聖な儀式の最中だぞ?!邪魔をするな!」
彼は怒りも露に、切夜をそう怒鳴りつけた。
が、その瞬間――青年の瞳が驚きに大きく見開かれることとなる。
なんと、戴冠を阻止する為、切夜が全力でタックルをした拍子に……愛菜の頭にかぶせられる筈だった王冠が、青年の手元を外れ、宙に放り出されてしまったのだ。
そうして、空中を舞った末――よりによって、すぽりと切夜の頭へと収まってしまう金色の王冠。
「え、え、えぇーっ?!」
自分の頭に感じる王冠の感触に激しく動揺し、叫び声を上げる切夜。
一方、尻餅をついたままの青年は――切夜の頭に王冠が収まったのに気付くや、大きく舌打ちをした。
「お前……いつか、後悔することになるからな?」
先程の穏やかな声とは打って変わって、低い――ドスの効いた声で切夜をそう脅してくる青年。
しかし、切夜も負けじと青年を睨み付けると大きく声を上げる。
「お前こそっ!!何が目的か知らないけど、うちの妹には指1本触れさせないぞ!」
切夜がそう告げるや、ふっと不敵に微笑む青年。
「やれるもんならやってみな。お前に、本当にその子が護れるのならな。小僧」
瞬間、切夜の足下の地面がいきなり消失する。
光の欠片すら見えない暗闇の中を真っ逆さまに落下していく切夜。
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