53人が本棚に入れています
本棚に追加
「おや?おはよう、切夜。そのおでこ、どうしたんだい?」
切夜がダイニングの席に着くなり、そう声をかけてくる眼鏡の男性。
彼は、切夜の父親の拝 守彦だ。
ちなみに、職業は童話作家で主に部屋に籠って仕事をしている。
「……別に、何でもないよ。ちょっとぶつけただけだし」
妹や父親に心配されるのが苦手な切夜は、ふいと父親から視線を逸らした。
と、そんな彼の額に――不意に、ぺたりと大きな絆創膏が貼られる。
貼ったのは、今目の前にいる人物――彼の母親の拝 ・好美・クリスティーナだ。
彼女は、愛菜と同じ……ふわふわした金の髪を揺らして切夜に近付くと、絆創膏の上から優しく切夜の額の怪我に触れる。
そうして、とても優しい声音で、
「痛いの痛いの……パパに飛んで行っちゃえ」
と、言い放った。
瞬間、わざとらしく「うっ!」と呻き――何故か胸を押さえて苦しむフリをし始める父親。
と、そんな父親の姿に、切夜の隣に座っていた少年が堪らずに吹き出した。
「父さんったら、おっかしいの!だって、切夜の怪我はおでこだよ?何で胸を押さえてるのさ!」
楽しそうに笑いながらそういうのは、拝 剛。
切夜の双子の兄弟だ。
切夜は日英ハーフの母親譲りの金髪碧眼で、剛は父親にそっくりの黒髪黒目だが、これでも2人とも歴とした一卵性双生児なのである。
最初のコメントを投稿しよう!