1人が本棚に入れています
本棚に追加
Episode.2神居尊彰という男 P.1
―邂理公国軍、国軍総統執務室。
コンコン。ガチャ。
「神居、いるかー?」
「如月・・・、ノックしたあとにすぐに入るのやめろ!」
「はいはい。でも、いるのわかってるじゃないか」
「そういう問題ではない!全く・・・」
私の名前は神居尊彰。邂理公国軍軍人で、地位は軍のトップである「国軍総統」だ。そして、今執務室に入ってきたこいつは如月典央。地位は軍上層部のトップである「参謀総督」だ。私たちは士官学校時代からの同期で、今は共に軍のため尽力している。
「それで?一体なんの用なのだ?如月」
「つい今しがた、軍の管轄の研究施設から連絡が入ってな。なんでも、施設から2人が脱走したとかなんとか・・・。重要な"被験体"だから逃がす訳にはいかんらしくて―」
「如月。人間を"被験体"などと呼ぶな。研究施設にいるとは言え、彼らは普通の"人間"だ」
「・・・悪い。お前は研究施設に対して反対だったよな。昔から」
私は国のために、金をかけてまで研究施設で錬金術師の育成,実験をする、公国政府のやり方には昔から反対していた。研究施設を軍の重要施設として扱うこと自体には賛成だが、その研究施設で行われる"実験"というのが、果たして人体に影響を与えないと言い切れるのかが些か疑問だったのだ。つまりは違法な"人体実験"を繰り返すのではないかということだ。
「軍の重要施設の1つとしては認める。だが、研究施設には最近黒い噂が絶えないそうではないか」
「違法な"人体実験を繰り返している"という噂のことか?お前がそんな噂を信用するだなんて珍しいな」
「普段のくだらぬ噂などは信用に値しないが、事実に当たらずとも遠からずな噂なら信用できると思わないか?」
「ま、確かにな。やっててもおかしくはないな。だがな神居。これも全部"国のため"なんだよ。そろそろ現実を受け止めろ」
「っ!!」
ガタン。ガシッ。
「お前は本気でそんなことを思っているのか!!」
「お、落ち着け。いいか?よく聞け。ここで俺を投げ飛ばしたところで何も変わりはしない。それはお前もわかってるはずだ」
「っ!!」
「だが、お前には今真相を確かめることができる。これはチャンスだ、神居。俺と一緒に今から研究施設に向かい真相を確かめるか、このまま放置するか。選べ」
「・・・付き合いの長いお前ならわかるだろ?決まっている。真相を確かめる!!」
「そういうと思ったぜ。よっしゃ行こう!」
最初のコメントを投稿しよう!