2 変わりはじめるカンケイ

3/14

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
* 中に入れと言われたので仕方なく言う通りにすると、中には二年の生徒会メンバー――璃々菜と田村くんがいた。 朝から生徒会メンバーが集まるなんて珍しいな。 斎森がわざわざ犬猿の仲のわたしを呼び出したのだ、もしかしたらこの二人がわたしに用があったのかもしれない。 「ん? あれ? なんでももがここにいるの〜?」 しかし、璃々菜はわたしを認めると、怪訝そうに小首を傾げた。 ……あれ? 「わたしに用があるのって璃々菜じゃないの?」 「え? りり、もものことなんて呼んでないよ? りゅうくん呼んだ?」 「いや、呼んでないかな」 ええ? 「いやでもわたし、こいつに頼みがあるって言われて連れてこられたんだけど……だからてっきり生徒会の仕事関連なのかと」 斎森がまさかわたしに個人的な頼みごとをするはずがない。いや、ちょっとした嫌がらせとしてなら、可能性はあるかもしれないが。 生徒会の、特に二年のメンバー(斎森除く)にはお世話になっている。多少の手伝いなら構わないと思ったんだけど……。 「えー? りり、知らないよぉ。……まあ、確かに司くんは呼んだよ? ちょっと生徒会二年のメンバーで話し合いしたいことがあったから〜」 「話し合い?」 「うん。夏休みにちょっと、隣町に行こーって!」 つまり、遊びの話し合いに朝っぱらから生徒会室を利用していたと……。 と、そこまで考えて、わたしは待てよ? と自分の思考にストップをかける。 性悪ツートップならやりかねないが、ここには生徒会の良心こと猛獣使……げふん、田村くんがいる。果たして彼がそんなくだらない事に生徒会室を利用せんとする彼女を止めないわけがない。 するとわたしの心を読んだかのようなタイミングで、田村くんが補足してくれる。 「あ、言葉が足りなかったね。実は次の文化祭、ちょつと食販規則の改革をしたいと思ってて、その参考に隣町の夏祭りを視察に行くんだ」 「そ、そうなの!? 食販規則の改革……すごいね」 うちの高校は、文化祭の出店で食品を販売する規則がわりと厳しかった。それは前期生徒会以前の伝統として、保健所の口出しには基本的に従う、というものがあったからなのだが……。 そういえば、璃々菜が公約の一つとして掲げてたっけ。 文化祭実行委員会と協力し、文化祭での食販の自由度を上げる、って。 「でね〜っ、保健所とうまく交渉したっていう隣町の夏祭りを参考にしようって話になったの! 司くんが見つけてきてくれたんだよぉ。頼りになるぅ!」 「へえ……」 斎森が。 やるじゃないか、と素直に感心する気持ちと、わたしだってこいつの立場ならそれくらい、という対抗心が綯い交ぜになって、頭がゴチャゴチャしてくる。 有能なんだよな、斎森……うん。色々考えたけどやっぱりむかつくわ。 「まあ、りりとしてはぁ、司くんはいらなくてぇ、りゅうくんと二人でデートしたいんだけどぉ……」 「はいはい」 「やーん、つれないりゅうくんもかっこいい♡」 「会長さすがに言葉を飾ってくれ……」 笑顔を保ちつつも、額に青筋を立てている斎森。普段女子にキャーキャー言われてるぶん、きっと璃々菜の『いらない』が応えたのだろう。 へっへ、いい気味である。 ニマニマしていると、キッと斎森に睨まれた。 「……藤堂お前、シャーデンフロイデもいい加減にしろよ」 「やだ、わたしそんなつもりじゃ」 「顔がにやけてるんだよ。その猫かぶりやめろ」 「そんなつもりじゃないって言ってるのに。こわ〜」 そう言って、いつもされている『やれやれポーズ』を真似て肩を竦めてみる。とてもいい気分だ。 はぁ、と斎森がため息をついたところで、田村くんが「それで?」と脱線した話を元に戻す。 「どうして司は藤堂さんをここに連れてきたんだ?」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加