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プロローグ はじまりは魔王城で
「んっ……」
眩しい光が当たっている気がして、僕は思わずベッドの上をイモムシのようにモゾモゾと動いた。
すぐに目覚めた方が楽だって分かってるのに、身体が言うことを聞かない。ほんと、これに関しては前世からの悪い癖だな……。
そう思いながらも、起き上がることは一切しようとせずに、頭の下にある枕をいじる。
いつも通り、これで光を防いで、二度寝し……ん???
俺は枕を掴みまくる。
こいつ、こんなに気持ちよかったか?いつも、せんべいの上で寝てる夢ばっか見てたのに……。というか、よくよく考えたら、ベッドの寝心地もいつもよりいい気が……。
そう思った瞬間、俺はバッと身体を起こした。慌てて辺りを見回す。
「やっぱり、俺のベッドじゃない…………それに……」
俺は、自分の身体をじっくり見る。あの小説に
描かれた神官:ユーリの白っぽい肌…………。
「なんで、全裸?いつも、寝る時はちゃんと服着てるのに……」
「ん……」
ムク……
ビクッ
自分の左側で気配がして、俺は思わずビクついた。
この気配、知ってる…………でも、なんで、こいつが、俺の隣に?さらわれるのは、聖女だったはずじゃ…………。
「やっと起きたのか……」
男の長い黒髪が揺れ、俺の顔を覗き込んでくる。
ドラゴンみたいに立派な2本の角、猫みたいに細長い瞳孔をもった満月みたいな黄色い瞳……。
「魔王…………」
俺は思わずそう口から漏らす。怖すぎて、声が震えた。
に、逃げなきゃ…………。
ピトッ……
「え……」
魔王の白い綺麗な手が俺の右手に重なった。
正直言って怖い……怖い、けど…………あったかい…………。
「目が覚めたようでよかった。昨日は急に気絶してしまったから、どうしてしまったのかと思った」
魔王とは思えないほどの優しい微笑みに、俺は目を離せなかった。
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