じゃない人たちの、一方その頃。

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「だからのぼせるって言っただろ……」 「ごめんなさい。大丈夫?」    真っ赤に充血したふたつのアーモンド・アイが、俺をじとーっと睨んだ。 「口移ししたら許してくれる?」 「……やだ。許さない」  ふてくされた顔で差し出された手にコップを持たせると、理人さんはゆっくりと上半身を起こした。  赤くなったり青くなったり忙しかった頬にも、すっかり血色が戻っている。  こくんこくんと水を飲むたびに上下する喉仏が、えろ……じゃなくて、かわいい。  空になったコップを片付け、隣に横になると、すぐに理人さんがピトッと張り付いてきた。  今日も熱中症警戒アラートが発令されるくらい暑かったし、湿気もすごいけれど、エアコンと冷感シーツのおかげで、比較的快適な夜を過ごせている。  こうして二人でくっついていても、理人さんの高い体温が心地良く感じるくらいだ。 「理人さん、もう眠いでしょ」 「そ、そんなことなッ……」 「身体が熱い」  むう……と不満を露わにしてから、理人さんは頭をグリグリ動かし始めた。  良い角度を見つけたのか、しばらくすると大人しくなる。  腕を抜き出し理人さんの背中に回すと、触れた肌はやっぱり温かかった。  眠くなると体温が上がるなんて、まるで子どもみたいだ。  ほんと、かわいい。 「佐藤くん……」 「はい?」 「好きだよ……」 「はい」 「だい……すき……」  途切れた言葉は、やがてすべての音を失った。  引っ張り上げたタオルケットで、細い背中を覆ってやる。  理人さんの額にそっと唇を押し当てると、闇に包まれた世界の上を、穏やかな寝息が漂った。 「大好きです……俺も」  届いていないはずの言葉が、理人さんの口元を緩ませる。  俺は小さく笑い、近づいてくる睡魔の気配を感じながら、ゆっくりと目蓋を下ろした。  fin
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