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二週間後、オレは本社にいた。
「この度、経営企画課に配属されました、模武鴨志蓮と申します。よろしくお願いします!」
配属先に決まった経営企画部 経営企画課で、着任の挨拶をする。
頭を下げると、揃わない拍手がパチパチと鳴った。
興味なさそうに自席に向かう人の輪の奥から、長身の男がオレに近づいてきた。
「課長の木瀬だ。よろしくな」
整った顔が、きれいな微笑をかたどる。
オレは、ゴクリと唾を飲み込んだ。
木瀬航生。
彼が、室長の〝尊敬する人〟だ。
「未熟者ですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!」
抱いたばかりやる気を燃やすことに集中していたオレは、まだ知らなかった。
この木瀬という男が、実は、鬼畜中の鬼畜上司で、
「ちょ、課長! なんすか、この量! これを明日までとか、いくらなんでも無茶ぶりすぎっ……」
「ん? できねえの?」
「……ッ」
さらに、
「理人なら、バブバブ文句言う前にまずやってみてると思うけどなあ~」
神崎室長の元カレだということを……!
「くっ……」
こ、こんんのおおおおぉぉ~~~!
バブバブ言うな!
あと、室長を名前で呼ぶな!
「くっそ、やってやんよ……!」
待ってろよ、神崎室長。
「ほら、無駄に熱血してねえで、さっさと手を動かせよ」
「う、うっせぇな! 今やるとこだよ!」
「プハッ、上等。期待してるぜ、ルーキー」
いつか絶対、追いついてみせる……!
fin
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