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「高校時代の風景が見える。その頃2人は付き合ってたんだけど、彼女は妊娠発覚を機に、突然純一さんのもとから家族もろとも去ってしまった。何の了解も得ずにね」
「高校生で妊娠とはねえ。その消えた元カノが突然目の前に。しかも、息子のお相手の母親として登場するとは」
「まず、ありえない展開だよね〜」
すみれの手がキーボードを打ち、真田純一の個人情報をもとに戸籍システムに侵入する。
同時に息子らしき人物のスマホから情報を入手。
「純ちゃんの奥さんは10年前に他界してる。隣りは息子さんで、真田哲夫22歳」
「もうさあ、純一さんの葛藤がガンガン胸に刺さって来るわけよ。話すべきか、言わざるべきか」
「そりゃ積もる話もあるでしょう。なぜ断りもなく姿を消したのか?ってね。相手の元カノの反応は?」
「それがね、全く初対面の風情を保っているみたいなの」
「お互い大人の対応をしていると。そりゃそうか。今は門出を祝うおめでたい席で、ネガティブな過去をほじくり返すわけにはいかないもんね」
「それそれ、そこなのよ。純一さんから伝わってくる、息子さんたちの幸せが何よりも最優先という思いね。自分たちの過去が過去だけに…」
「それは元カノも同じ思いなんでしょうね…」
「うう、聞いてて泣けてくるわ」
「その思いを、意思に反して直で受け止めてしまった蘭子の心中、お察しします」
「わかってくれる〜?」
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