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蘭子はある日を境に、仕事以外で人の心を読むことをやめていた。
人の心の中は、誰もが興味をそそるものだし非常に魅惑的である。
蘭子は能力に気づいた当初、人の心を読み漁ることに夢中になってしまった。
やめようにもやめられず、人の思いや感情を、際限なく享受し続けた結果、気づいた時には自分の心を失いかける程の中毒症状が現れていた。
意識混濁となって、数日間昏睡状態に陥ったこともある。
そしてただ1人の肉親であるすみれに対し、随分と苦労をかけてしまった。
これが蘭子にとって、何よりも辛かった。
何の因果かは分からぬが、この授けられた能力と一生上手く付き合っていく方法。
蘭子が生み出した答えとは、むやみに人の心は覗かない、というシンプルな結論であった。
時に気まぐれに自分の意向を乗り越えて、勝手に思念が飛んでくる、今回のような現象は別として。
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