プロトタイプ

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レイナお姉ちゃんはいつだって完璧だった。 「お姉ちゃん」 「なあに、アンナ」 「ここの問題、教えて」 端末の白い画面上に浮かぶ黒い数列を指すと、のぞき込んできたお姉ちゃんの人差し指がすっと同じところを指す。細くて、長くて、白い指だ。 「ここね。62+54」 お姉ちゃんの肩から滑り落ちた、茶色がかったさらさらの髪が私の頬を撫でる。 「そう。いくつになるの?」 「116ね」 お姉ちゃんの言ったとおりに入力して答え合わせをすると、ピンポン、と陽気な音。正解だ。 「さっすがお姉ちゃん!せいかーい!次の問題は?」 振り返ると、お姉ちゃんはやっぱり優しく微笑んでいた。お姉ちゃんの余裕、というやつだ。 「142」 お姉ちゃんは絶対に答えを間違えなかった。 そして私の学校のテストの成績は、超悪かった。
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