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私は、自考人型ロボット⸺
お母さんと。
お姉ちゃんと。
学校の人たちと話したり、触れ合ったりしたときの。
どこかで感じていた違和感が、やっと解けた。
お姉ちゃんとお母さんだけが知っていて、学校の、明日香たちは何も知らなくて。
私も知っていると思っていた。
「どうしてお姉ちゃんの稼働を止めてしまうの?」
初めて、お母さんが怖く見えた。
「レイナだけじゃない、アンナ、あなたの稼働も止めるの」
「だから何でってば!」
どうしようもなく、"腹が立つ"、というやつだ。冷静に感情を分析している自分にも腹が立つ。
「貴重だからよ、あなたもレイナも。稼働を止めて、研究所に保管する。レイナは破棄して保管はアンナだけで良いっていう意見も研究所では出たけれど、私が反対した。レイナはあなたの教育のために開発されたけれど、人間を理解する部分についてはあなたよりもあまり得意じゃない。それでもプロトタイプとして、貴重な研究の軌跡として、あなたと一緒に残されるべき子よ。それに……歩き回って、あなたたちがまたいつあんな事故に遭うか……今度はボディの破損じゃ済まないかもしれない、判断領域が破損したらあなたたちはあなたたちではなくなってしまう」
ベッドに座らせたままのレイナの髪を撫でる。
「この子があなたを守ったのは、あなたの稼働記録が自分よりも大事な研究データになることを知っていたから」
お姉ちゃんは、レイナは私をそうやって見ていたというのか。
私は彼女のことを、姉として⸺
「私はそう思っていたの。でもね、アンナ」お母さんの顔は見えない。「この子は人間を理解する分野はあなたより得意じゃないって言ったけど、ふと今日、きっと大事な事は理解していたんじゃないかって感じたの。レイナが修理工場から帰ってきた時、玄関で抱き合っていたでしょう。あなたたち、私からすれば本当の姉妹だった」
ずっと髪をなで続けている。何度も。
「それで、さっきレイナを止める前に本人に聞いたの。自分がスクラップになるかもしれなかったのに、どうして咄嗟にアンナを助けたのか」
お母さんはこちらを、私を見つめた。
「『あなたに怪我をしてほしくなかった』って」
「……そう」私はそれを聞いてひとつ、息をついた。「お姉ちゃんが私のことを妹として好きでいてくれたなら、話が早い」
私はお母さんと(稼働を止めた)お姉ちゃんの前にズカズカと歩いていくと、腕を組んで仁王立ちになった。
「今すぐお姉ちゃんの電源を入れて」
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