プロトタイプ

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お母さんは夢から醒めたかのような顔でぽかんとしている。 「お姉ちゃんの!電源を、つけて!人間にも耳があるでしょ!」 私はおもちゃ売り場の子供みたいに喚き散らした。実際、稼働し始めたのが一年前らしいので、子供といえば子供なのかもしれないが、見た目は立派な高校生。そんなのに喚かれてはひとたまりもなかろう。おめでたい、初の反抗期だ。 「私たちを生み出したのはお母さんたちでしょ?でもさぁ、自我を与えておいて、一年だけ野放しにしておいて、その後は一生ほこりかぶって寝てなさいなんて身勝手もいいところよ」 お母さんは口をあんぐりとあけたままフリーズした。以前変な言葉だなと思いながらインプットした慣用句、「言葉を失う」とはまさにこのことだ。 「私とお姉ちゃんは何?」 「ええ……ネイバーの、プロトタイプ」 「じゃなくて!」 「……自考、人型ロボット」 「そうでしょ」 私は勝ち誇ったような笑みを浮かべてみせた。お姉ちゃんはお上品だから、多分こんな顔はしない。明日香はするかもしれないが。 「私たち、自考人型ロボットNEIGHBORの立派なプロトタイプなの。自分の事は自分で考えるわ」
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