プロトタイプ

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「お姉ちゃん」 「なあに、アンナ」 「ここの問題、教えて」 端末の白い画面上に浮かぶ黒い数列を指すと、のぞき込んできたお姉ちゃんの人差し指がすっと同じところを指す。細くて、長くて、白くてきれいな指。 「ここね。368÷23」 お姉ちゃんの肩から滑り落ちた、茶色がかった艶のある髪が私の頬を撫でる。 「そう。いくつになるの?」 「だめよアンナ。私から直接答えを聞いちゃ駄目って言われているじゃない。学校のテストの点、あんまりよくないんでしょ?一緒に考えましょう」 「ええー……」 「まず商を立てるの。36の中に23はいくつ入る?」 「……1つ」 「じゃあ、36の上に1を商として立ててみましょう」 お姉ちゃんは教えるのがだんだんうまくなっていった。 ひとつずつ、ひとつずつ、積み木を積み上げるように教えてくれたおかげで、私の成績は急上昇。少数、図形、比例反比例、連立方程式、因数分解に微分積分。かじりつくように勉強したらあっという間にトップに駆け上がって、クラスメイトに計算問題で私の右に出る人はいなかった。
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