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完璧に見えるお姉ちゃんにも、苦手な分野がある。
「お姉ちゃん」
「なあに、アンナ」
「ちょっとこれ読んで」
私は端末をお姉ちゃんに差し出した。お姉ちゃんは髪をとかしながら、しばらくそれを読み込んだ。
「『なぜこの主人公は、何も言わなかったのでしょうか』。ちょっと難しいんだよね……お姉ちゃん、わかる?」
「……なぜかしら。ちょっと難しいわね。三番じゃない?」
お姉ちゃんの指さした選択肢を選んで答え合わせをすると、端末は、ブウと不機嫌そうな音をたてた。
お姉ちゃんが困っている。形の良い眉の根を寄せて、腕を組んで天井を見上げ、片足に体重をかけて——というのが"困っている時のお姉ちゃん"だ。その困っている様も絵になりそうで、文学が出来ないくらいどうってことないんだろうな、なんて思う。
「お姉ちゃん、文学は私より苦手だよね」
「そうねえ……教えられなくてごめんなさいね。私も、この分野頑張らなくちゃ」
そう言って、ため息をつきながら笑って肩をクイとすくめる愛嬌も、可愛いなぁと思うのだ。
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