2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま」
"お姉ちゃん"は、ものの一週間で帰ってきた。
修理工場から。
「損傷がそこそこ激しかったから、部品の調達にも手間取ったのよ。あともう少しで試験期間が終わるっていうこの時期に、修理に一週間もかかるなんて」
お母さんはご立腹だ。
レイナは、お母さんが開発した「NEIGHBOR」と呼ばれる自考人型ロボットのプロトタイプだ。
つまりレイナは実験的にうちで稼働しているのであり、お母さんいわく、人間らしさを追求する上でまだ未熟なところがある、らしい。
文学問題が苦手なのもそのせいだとか。
だが、私にとってレイナは人間にしか思えなかったし、姉と思って慕ってきた……というか、姉としか考えたことがない。
「良かったぁ、お姉ちゃんが無事で。守ってくれてありがとう」
「ふふ、無事ではなかったでしょ、一応無事だけど。あなたも無事で良かった、アンナ」
玄関に立ったままのお姉ちゃんに抱きつくと、よしよしと背中を叩かれる。お姉ちゃんだ。
結局あの事故は、飲酒運転と車の自動制御装置の故障が重なって起こったものだった。しかし不幸中の幸い、運転手は軽い怪我で済んだし、突っ込まれた塀の民家の住人は留守だったし、"大怪我"をしたお姉ちゃんは一週間で"完治"した。
可哀想に、事故を起こした運転手に請求される修理費は莫大だろうが。
「さあレイナ、上がって。リペアチームが私の娘の修理で手を抜かなかったか、直接点検するわ」
「はい、"お母さん"」
「明日からまた学校だもんね、お姉ちゃん」
「ええ」
お姉ちゃんはインフルエンザだ。
そういうことになっている。
最初のコメントを投稿しよう!