帰るべき場所

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*  *  *  わたしは薄暗いオフィスで目を覚ました。  時計を確認すると、午前六時。パソコンの表計算ソフトに大量の〝い〟の文字が打ち込まれている。キーボードに指を引っ掛けて寝ていたらしい。  なんだか頭がぼうっとする。とても長い夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。でも、不思議で愉快な夢だった気がする。  わたしは大きく伸びをして、顔を洗うためにトイレに向かう。途中の廊下になぜか三毛猫がいて、わたしにすり寄ってきた。この会社、猫なんて飼ってたっけ。  鏡に映る自分の顔がなんだか懐かしい。随分と久しぶりに見たようだ。 『戦士様ってこういうお顔なんですね』  頭の中で誰かの声がした。周りを見渡しても誰もいない。まだ出勤時間ではないのだから当たり前だ。 『一度こちらに来てみたかったんですよね。それと、あの時に食べたジンギスカンの味が忘れられなくて』 「アラネス、ジンギスカンなんてそうそう食べられるわけ……」  反射的に返事をしたが、これは一体どういうことだ。まだ夢を見ているのかと思って頬をつねるが、普通に痛い。 『しばらくこちらでお世話になります。よろしくお願いしますね』 「よろしくはいいから説明しなさいよ」  わたしの名前は佐倉光(さくらひかる)。しがないシステムエンジニア、のはずだったが、どうやら新たなる冒険が始まる予感がしている、今日この頃だ。
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