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「もしかして、これ、あなたの体?」
わたしは鏡に映る顔を眺めながら聞いてみた。
『はい、お見苦しくて申し訳ありません』
お見苦しいとは。色は白いし、お目目ぱっちりだし、めちゃくちゃかわいいじゃないか。と、心の中で悪態をついていると、彼女が恐れおののいた声を出した。
『あの、大変申し訳ありませんっ。どうか、どうかお怒りをお鎮めください……』
どうやら、思ったことも彼女に筒抜けらしい。
「あなた、わたしの頭の中にいるの? いや、体があなたのなんだから、わたしの方が頭の中なのか?」
『わたしの召喚術で、あなた様をわたしのひんそ……体に召喚させていただいております』
今、貧相って言いかけた事はツッコまないでおく。
「召喚っていうより、霊媒っぽいね」
『れいばい? それは何ですか?』
「霊媒は霊媒だよ」
面倒くさいので、霊媒師のイメージを思い浮かべてみる。
『ははあ、なるほど。死者の魂を呼び起こすのですね』
イメージの共有も可能らしい。これは便利だ。
「それで、わたしに何の用なんだっけ」
『実は最近、この村の近くにそれはそれは形容し難い、恐ろしい怪物が出るようになりまして。腕の覚えのある者を向かわせたのですが、それはもう見事に返り討ちに』
わたしは若干嫌な予感を抱きつつ話を聞いた。
『困り果てていたところ、女神のお告げを聞いたのです。ヒカリの戦士を召喚すれば、たちどころに解決に導いてくれるであろう、と』
「それがわたしだと?」
『はい、ヒカリの戦士様』
ツッコミどころが多すぎて、どこから聞こうか迷う。
「申し訳ないんだけど、わたしには戦いの経験なんか、一ミリもないよ」
『ミリ?』
いちいち聞き返してくるのがちょっとかわいいが、今は置いておこう。
「そもそも、あなたのこの体でどうやって戦うっていうの」
『すべては女神様の思し召しですから』
「いやいやいや、それは妄信ってやつでしょ」
この子は女神様に死ねと言われたら本当に死んでしまいそうだ。そこまで思って、彼女からこの件に対して特に反応がないので、わたしは若干、恐怖を感じた。
『わたし、簡単な術法なら使えますので、それで戦えということですかね』
「その場合、わたしがあなたに入り込む意味がわからないよ」
この子、もしかして何も考えていないのでは。
『よく言われます』
「言われるんかい」
わたしは秒でツッコミを入れた。
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