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帰るべき場所
「あのう、皆様はどなたですか」
椅子に縛り付けられたミレイが目を覚まし、わたしたちの顔を見渡している。
「ごめん、拘束を解かなきゃね」
わたしはリカに目配せし、彼女を縛っていたロープと術法を解いた。これまでの事情を聞いたミレイは、泣き崩れた。自身が信じていた女神に裏切られたことがショックだったようだ。
星の化身は約束を守って諸悪の根源を消し去った。次は人間の番だ。
「ところでファウラ。あなた、気軽に請け負っていたけど、当然戻って来られるのよね」
「何のことですか?」
わたしはとぼけるファウラを軽く睨んだ。
「人類への警告の件だよ。魂の根源と一つにならないといけないんでしょ」
「確かに、それをやったら、わたし個人の人格は消えてしまうかも知れませんね」
ファウラは当たり前のように答えた。
「ちょっと待ってよ。わたしは犠牲者を出すのは反対なんだけど」
「戦士さんは大げさですね。別に、存在が消えてしまうわけじゃないんですよ。わたしの魂は等しく新しい魂の一部となって受け継がれていくんです。……それにね」
ファウラはメルリアとミルシェの頭に手を置いた。
「長く生きて色々と見てきましたが、この世界は守るに値する素晴らしいものだと今でも思っています。こっちの世界のことはこの子たちや、あなた方にお任せしますよ」
ファウラが微笑むと、星の化身が彼女に手を差し伸べる。二人が手を取ると、あたりが光に包まれた。
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