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「あなたと一緒に走りたかったからです」
『私と?現役じゃないと言っても、私は元トップアスリートなのよ。それに今でも練習は欠かさないし」
「彼女の一つにまとめたブラウンの長い髪が、左右に揺れるんです。その度にまた、いい匂いがしてくるんです」
森君は頭を左右に振って、再現をした。
「俺もその匂いは知ってるよ」
「友達になりたかったんです」
『それで走る練習したの。おかしいわね。ただ、普通に声をかければいいんじゃない、それこそ、こんにちは、とか』
「足が速くないと、相手にされないような気がして」
「グレートギャツビーみたいなこと言うのね。知ってるこの小説?」
「知らないです」
「じゃあ宿題、次会う時までに読んでて」
「そう言って彼女ままた、俺を置き去りにしたんです。僕もちょっと並走するだけで、一杯一杯だから、追いかけようがなくて」
「それで宿題は読んだ?」
「読みました。そんなに長い小説じゃないんですけど、一回読んだだけじゃよくわからなかったので、解説とかを読みました。阿部先生は知ってます?」
「知らない。俺は筋肉専門なんだと思う」
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