恋のランニング 〜ザ・ファースト・テイク〜

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「俺の話はどうでもいい。で君は、その後どうしたんだ」  俺はバツイチのしみったれの、ろくでなしだ。でもそれは関係ないだろう。 「友達になってほしいんです」 『今でも、友達じゃない?私たち』 「もっとあなたのことを知りたいし、名前も知らないし、ここで走ってることしかわからない。そう言うのって友達って言えますか」 『私はあなたにガッカリされるのが嫌なのよ。そんなに憧れるほど、なんていうか美人でも可愛くもないし、君よりも大きいし』 「あなたはその長身なのが魅力じゃないですか!」 「僕は力強く彼女にそう言ったんです」 「彼女の大きなストライドは確かに綺麗で、バネの効いた走りだった」  ランナーとしての美しさがある。ジャージの中の筋肉が躍動しているのがわかる。 『友達ねえ。どう言うことを考えてる?』 「連絡先を交換したり、一緒にご飯食べに行ったりとか、時々LINEしたりとか、そういう普通の友達です」 『もうちょっと、走って考える』 「そう言って彼女はスピードを上げて、僕を置いて先に行きました。彼女は何を考えてると思います?」 「有名人か元有名人なんだろう?世間体みたいなことを考えているのか、それとも恋人とか旦那さんがいて、遠慮してるのか」 「それならそうと言ってくれればいいのに」  おばさんにも乙女心っていうのはあるだろう。女子は幾つになっても女子なんだから。
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