1人が本棚に入れています
本棚に追加
「とても速いんです。あっという間に抜かれるんです。すごい背が高くて、髪の毛を一つにくくって、ピンク色のキャップをかぶって、抜かれたあといい匂いがするんです」
「いい匂い?」
「いや香水とかじゃなくて、多分シャンプーとかの匂いだと思うんですけど、僕はその背中を何度も見て、とってもかっこよくて、素敵だなと思って」
「で、その女子に抜かれたくないという話でいいんですね」俺は念のため確認した。
「いや、まあそれは抜かれない方がいいんですけど、なんていうですかね、彼女と話がしたい、友達になりたい、できれば付き合いたいんです」
彼はうつむき、恥ずかしそうに手をモゾモゾ動かした。
ランニングの相談ちゃうやん。恋愛相談やん。
「声をかけてみては?」
「実力差がありすぎて、俺なんか相手にされないような気がするんです」
そういう問題かな?
「そんなに速いんですか?」
「そりゃあもう、どこかの代表選手かなって思うぐらいですよ」
「代表選手?」
「ナショナルチームが着ているような、ジャージを着てますから」
だいぶんと手強いかもしれんな。
「となると『おはようございます』っていうだけでは、あかんかもしれませんね。森さんの走力ももっとレベルアップした方がいい」
ナショナルチーム?なんの競技かな。
「はい。僕もそう思います。僕も速くなりますかね?」
最初のコメントを投稿しよう!