恋のランニング 〜ザ・ファースト・テイク〜

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「とても速いんです。あっという間に抜かれるんです。すごい背が高くて、髪の毛を一つにくくって、ピンク色のキャップをかぶって、抜かれたあといい匂いがするんです」 「いい匂い?」 「いや香水とかじゃなくて、多分シャンプーとかの匂いだと思うんですけど、僕はその背中を何度も見て、とってもかっこよくて、素敵だなと思って」 「で、その女子に抜かれたくないという話でいいんですね」俺は念のため確認した。 「いや、まあそれは抜かれない方がいいんですけど、なんていうですかね、彼女と話がしたい、友達になりたい、できれば付き合いたいんです」  彼はうつむき、恥ずかしそうに手をモゾモゾ動かした。  ランニングの相談ちゃうやん。恋愛相談やん。 「声をかけてみては?」 「実力差がありすぎて、俺なんか相手にされないような気がするんです」  そういう問題かな? 「そんなに速いんですか?」 「そりゃあもう、どこかの代表選手かなって思うぐらいですよ」 「代表選手?」 「ナショナルチームが着ているような、ジャージを着てますから」  だいぶんと手強いかもしれんな。 「となると『おはようございます』っていうだけでは、あかんかもしれませんね。森さんの走力ももっとレベルアップした方がいい」  ナショナルチーム?なんの競技かな。 「はい。僕もそう思います。僕も速くなりますかね?」
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