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彼女の姿があっという間に見えなくなった。
「めっちゃ早いな」俺は森くんにいった。
「はい…」
「好きになるの、わかるわ」
「ええ?」
彼が汗をダラダラとかきながら、目をむく。
「彼女はどこかで折り返して、正面からすれ違うことってないの?」
「正面からすれ違ったことはないです」
「ふーん、普通は河川敷のコースやったら、折り返すのにな」
見たいなあ、正面から。美人アスリート。森くんと一緒に、練習するか?
「明日から特訓やな」
「ええ…無理ですって」
「いや、大丈夫や、俺にまかしとけ。君を代表クラスのランナーにしてあげるわ」
初夏の暑い日だった。俺の額にも汗が滲む。
勝利の女神は後ろに髪の毛がないとかなんとか、そんな話を思い出した。じゃあ前髪をつかむまでだ。
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