恋のランニング 〜ザ・ファースト・テイク〜

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   ノックの音がした。コンコン。 「どうぞ〜」俺は努めて愛想良く言った。  男が入ってきた。黒っぽいTシャツにジーンズで、紺色のキャップをかぶっている。キョロキョロと部屋の中を見回してから、俺の前に立った。 「どうぞ、お座りください」俺は笑顔を作った。 「はい…失礼します」鞄を膝に抱えて、男は座った。 「森さんですね、初めまして」俺は頭を下げた。 「初めまして。森です」彼の視線が落ち着かない。 「今日はどういった相談でしょうか?」  俺は彼を落ち着かせるために、できるだけ最大級の笑顔を作った。 「えっと、ホームページにはこちらは、ランニングクリニックと書いてあったんですけど」 「ええ、もちろん。私がランニングクリニックの院長、阿部です」 「ホームページには、ランニングに関する相談どんなことでも、受け付けますと書いてあったんですが…」  俺は大きく頷いて笑顔を作り、目を見開き、信頼に足る人物だということをアピールした。
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