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「レト、本当は俺、もっと違うことを勉強した方がいいのかな」
「いいえ、そんなことはありません。ユウ様の目標は明確ですし、先々に繋がると判断しています。客人の中には将来を思い描けないまま、儚くなった方もいます。ユウ様は、こちらでの暮らしを考えてくださっているでしょう?」
「うん。だって、折角ジードに命を助けてもらったんだし。生きてれば、いつか運よく帰れるかもしれないし」
「そうそう、その意気ですよ! ああ、もうすぐ、約束のお時間ですね?」
そうだ、今日は公爵令息のスフェンと夕食を約束した日だった。王都の公爵家の屋敷にはジードと一緒に行くことになっている。
俺は慌てて支度をした。レトのアドバイスで、絹のシャツに上下揃いの華やかな花の刺繍が入った服を着る。耳には琥珀のピアスだ。
元の世界では耳に穴を幾つも開けて、髪も金色に染めていた。姉が美容師で好きにさせていただけだが、今は色が抜けて、すっかり黒髪に戻ってしまった。瞳だけは昔から明るい茶が入ったままだけど。瞳を見て、琥珀のようだと言ったのはジードだった。
支度をした俺を、レトがため息をついて見つめた。
「よくお似合いです。特にその琥珀は見事ですね」
「この間、誕生日だったって言ったら、ジードがくれた。気い遣わせて悪かったよな」
レトが何か言いかけた時に、扉がコンコンと鳴った。
目の前に立つジードは、騎士の礼装を身に着けていた。体にぴしっと合った黒の上下は筋肉質な体を見事に浮き上がらせ、金髪は後ろに流している。
「うっわ、カッコいい!」
「ユ、ユウこそ」
「ああ、派手だよなー、こっちの服って。今まではどこに行くにも制服だったけど、レトが用意してくれたんだ。この琥珀もさ、初めてつけたんだけど、どうかな? ジード?」
騎士は目を瞠り、なぜか耳の先まで真っ赤になっていた。
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