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公爵家の屋敷に着くと、スフェンが玄関に出迎えてくれた。美しく整えられた庭も豪華な屋敷も、まるで映画の世界のようだ。
「ようこそ、ユウ! ジード、君も一緒とは嬉しい限りだ」
「こちらこそ、貴殿の厚情に心から感謝する。⋯⋯だが、少しは言葉に合った顔をした方がいいぞ、スフェン」
「その言葉を、そっくりそのまま君に返したいな、ジード。今にも噛みつきそうな顔をしているぞ。最近は、ユウの行く場所には必ず君がついてくると評判だ」
玄関前で、二人は微妙な空気を醸し出している。
たしか貴族学校の同級生だって聞いてたけど、あんまり仲は良くなかったのかな。
「スフェン、今日は招待してくれてありがとう。楽しみにしてたんだ」
「ユウ! ああ、その華やかなコートはすごくよく似合ってる。ユウの愛らしい顔立ちや繊細さを引き立てているね」
今日も勘違いだらけの発言が、いっそ清々しいな。俺の手を取ろうとしたスフェンとの間に、すかさずジードが入ってくれた。
「ユウ? ⋯⋯その、耳の琥珀は?」
「ああ、ジードが誕生日のプレゼントにくれたんだ」
そう言った瞬間、スフェンは眉を寄せて唇を噛み締めた。
「まさか、本気だったとは⋯⋯」
「本気?」
「ユウ、何も聞いていないのか? それは⋯⋯」
「スフェン!」
ジードの他を圧するような低い声に、スフェンは黙った。
「琥珀は⋯⋯。ユウの誕生祝に贈ったものだ。それだけだ」
琥珀のピアスがどんな意味になるのか、この時の俺は、全く何もわかってはいなかった。
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