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42.不変の愛
「結婚……と言われましても、ですね」
驚きすぎて変な言葉遣いになる。ジードが、さっと青ざめた。
「ま、まさかユウは、他に誰か」
「はあ?」
誰かって何だ。ジードは言葉が続かずに、俺を見たまま固まっている。微妙な空気が流れたので、何とか心を落ち着けて、はっきり言った。
「俺はジードが好きだよ。他の人と結婚なんて、考えたこともない」
ジードの顔がぱっと明るくなる。碧の瞳が、まるで陽を浴びた新緑みたいにきらきらと輝いた。
「じゃあ!」
「いや! そもそも結婚なんて思ったこともないから。ちょっと考えさせて!」
「……考える?」
「だって俺、この国のことよく知らないんだよ。結婚相手の数とか性別とか、色々あるよね?」
ジードの眉が上がり、きりっとした表情になる。
「エイランでは女神に誓って伴侶は唯一人だけと定められている。性別や種族は問わない。もちろん、俺はユウしか考えたことがない」
「あっ……そう」
かあっと頬が熱くなる。嬉しいけどいきなり真っ向から言われると、動悸が激しくなるじゃないか。ドッドドッと鳴り続けて、胸が苦しい。
「もし子どもが必要なら、専門の魔術師がいる」
子ども? 子どもって……。
だめだ、俺のキャパは狭すぎる。いきなりの結婚話に子どもの話なんかされても、猫や犬しか浮かばない。もこもこしたのが、頭の中でみゃーみゃーきゅうきゅう言ってる。
「……無理」
「ユウ!」
「急に結婚なんて言われても考えられない。俺の国では、十代で結婚する人はすごく少ないんだ。ずっと先の話なんだよ。それに、今の俺には何もない」
ジードは、鼻先が触れ合うほど顔を近づけて、真剣な瞳で言う。
「俺はユウさえいてくれればいいんだ」
「そ、それは嬉しいけど……。結婚して暮らすには金がいるだろ。俺、帰還術で使っちゃったし」
「金の心配はいらない。第三騎士団は魔獣相手な分だけ、他の騎士団より給料が高い」
危険手当でもついてんのか? そう言えば、魔獣討伐の報奨金もかなりの額だったとロドスがラダに自慢していたっけ。
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