42.不変の愛

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「いや、ジードだけが稼ぐのは変じゃない? 俺も自分で働けるようになりたい」 「ユウは、この先二人で生きることを考えてくれるんだな?」  それは、まあ……、と言ったらジードは嬉しそうに笑った。 「ならば、まずは一緒に住もう。ここは俺の屋敷なんだ」 「えっ」  この、お貴族様ー!! と思った途端に抱きしめられた。ちょっと待てと言っても全然聞かない。何度もキスをされ、いつの間にかレトに会いに王宮に向かうことになっていた。 「ユウ様! ユウ様ああっ!」 「レト――ッ!」  王宮の応接室に通されて待っていたら、レトが飛び込んできた。俺たちは抱き合って、わんわん泣いた。  レトは王宮で選抜され、客人に付けられる世話人だ。世話人は、客人が王宮に入ってから出るのを見届けるまでが一連の仕事になる。俺が元の世界に帰った時点で世話人の仕事は仮終了となり、記録だけが残されていた。 「無事に戻られて本当に良かった。ジード様の元でお暮らしになるなら、最後に書類を出していただきます。これを出されたら、私の務めも全て終了となります」 「レト、……本当にありがとう」 「ユウ様のお側で過ごすことができて、とても幸せな日々でした」  レトが泣きながら微笑む。俺もすぐに目の前が涙で滲んでしまう。 「戻られたならもう一度王宮で暮らす決まりですが、先日はジード様がご自宅に連れ帰ってしまわれたので……。でも、こうしてお二人の門出に立ち会えるとは感無量です。どうぞこちらに御手をお願いします」  国王陛下に提出する書類に、俺とジードはそれぞれ手をかざす。書面に俺たちの名が浮かび上がり、レトが立会人となって届け出が受理された。  涙ぐむレトが、ご婚約おめでとうございます、と言った。
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