42.不変の愛

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 帰宅後、俺たちは二人きりで向かい合っていた。部屋には、ぴんと張りつめた空気が漂っている。  ジードは扉の前に立ち、俺はベッドの上に座っている。ジードが一歩踏み出した途端、俺は枕を思いっきり投げつけた。ベッドには枕の他にクッションが幾つもあったので、それも投げた。ジードはひょいひょいと器用によけていたが、一つが顔に命中した。 「……ひどいと思うんだが」 「どっちが!」  俺が睨みつけると、ジードは呻いた。眉を下げたまま、すがるような視線を向けてくる。 「たしか、結婚についてはこれから考えるって言ったはずだ! でも、王宮を出て暮らす時点で婚約になるんじゃ、もう決定事項じゃないか!」 「……」  王宮を出る条件をちゃんと聞いていなかった俺は、確かに悪い。でも、ジードはわかってて、俺を王宮に連れて行ったんだ。混乱に付け込まれた気がして、無性に悔しい。  ジードは足元のクッションを拾いながら、口を開いた。 「……異世界からの客人の後見は、王族と上位貴族の力関係で決まる」 「え?」 「貴族社会では、後見人になることが自分の地位の象徴になる。力のある貴族が後見を望んだら、他の者は手が出せない。俺じゃどうやってもユウの後見になれないことはわかっていた」  そういえば、レトも以前、ジードは俺の後見になれないと言っていた。 「過去には、後見となった貴族が、自分の子と客人を結婚させようとしたこともある。エイランに新たな風を吹き込むと言われる客人の注目度は高い。ユウは特に人気があった」 「……なんで」 「女性と見まがうような外観と若さ。それに加えて、魔力を増やす食べ物を作れる。まるで新しく発見された美しい魔石のようなものだ。後見どころか縁談も多いとレトがこぼしていた」  俺の手から、クッションが落ちた。 「そんなの……知らない」 「世話人は客人にとってより良い環境を用意する。不要な話を耳に入れないのも必要な仕事だ」  俺が考えていたのは、菓子を作って自立することだった。レトはいつも、それを優先してくれた。
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