1390人が本棚に入れています
本棚に追加
ジードが勢いよく食事をする姿につられてぱくりと食べたら、味がわかった。気がついた時にはとっくに食事を終えた碧の瞳が、ほっとしたように俺を見ていた。
ジードにはいつも助けられている。魔獣から助けてもらったあの日から、ずっと。
「ありがとう、ジード」
「いや、公爵家の食事は王都でも美味だと評判だ。折角の招待だ。気兼ねなく味わった方がいい」
スフェンが、驚いたように目を瞬いた。
「⋯⋯なるほど。君は思ったよりも気が回る。鍛えているのは、体だけじゃなかったんだな」
「お前の言葉は、昔から棘があるんだよ!」
料理人が今日の為に腕を振るったと言う料理の数々は、どれも素晴らしいものだった。何よりも、俺の前に置かれる皿は、量が少ない。これなら何種類も食べられる。
「ユウは少食だと聞いたから、ごく少なめにしてある。もっと食べられそうなら遠慮なく言ってくれ。すぐに用意させるから」
「スフェン、十分だ。ちょうどいい」
ジードが素早く自分の皿に目を走らせたのを、スフェンは見逃さなかった。
「ジード、君の分は通常の量にしてあるだろう。うちの料理で満足できなかったなどとと言われては困るからな!」
「ふん、お前だってちゃんと気が回るじゃないか」
珍しく意地悪な笑みを浮かべるジードに、スフェンは嫌そうに目を細めた。
この二人は仲がいいのか悪いのか全然わからないな⋯⋯。
俺がじっと見ていると、ジードは微笑んで、次に使うカトラリーを教えてくれる。嬉しくなって、いつもよりずっと食が進んだ。
「すごい⋯⋯。どれも美味しい」
「光栄だ。料理人に伝えておこう」
ぱくぱくと食べる俺を見て、ジードはとても嬉しそうだ。そうか、いつもたくさん食べろって言ってるからな。これもジードが隣にいてくれるおかげだ。料理を次々に平らげると、きれいに皮を剥かれた小さな果実が出された。一口食べて、はっとする。
──甘い。
最初のコメントを投稿しよう!