43.騎士の愛とスイーツの恋 ※

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43.騎士の愛とスイーツの恋 ※

 手の中の琥珀が、ほんのりと温かい。  俺の手を包む大きな手は、その何倍も温かい。  美しい琥珀のゆらめきに、胸の奥が痛くなる。  きらきらと輝く琥珀に、たくさんの切ない想いがこみあげる。 「……ねえ、ジード。テオが前に言ってたんだ。異世界からやって来る者は皆、女神に愛されているって。俺もそう思う。だって、この世界で最初に出会ったのは、ジードだったんだから」   は、偶然生まれた空間の歪みかもしれない。でも、あの最初の日、魔獣退治の騎士に出会えたのは女神の加護があったんじゃないか。  この世界で生きろ、と。そう言われたような気がする。 「あんなに聞き取れなかった言葉が、こっちに戻ってからは普通に聞こえる。これも女神の加護なのかな」 「……魔術師が、戻ったユウに祝福を与えていた。そのおかげかもしれない」  ジードは身を屈めて、俺の手の甲にそっとキスをする。 「たしかに女神トリアーテは慈悲深い。魔獣を退治できる騎士なら幾らでもいる。それなのに、俺にユウを助ける機会を与えられた」  ……こんなの、反則じゃないか。  触れられた手が熱いし、胸の奥もきゅっと痛い。それとも、これも俺がジードを好きだから? 「本当は……、手に口づけるのってさ、女の人にするもんなんだろ?」 「エイランでは関係ない。大事な相手や自分が敬意を持つ相手にするんだ」 「……そっか」  ここでは、気にしなくていいのか。 「あのさ、ジード。俺は向こうで、気にしてたことがいっぱいあった。好きな相手が男か女か、自分がどう見られてるか。そんなことばっかり」 「……ユウの世界では、相手の性別がそんなに重要なのか?」 「うん。恋愛や結婚は異性とするのが普通だって思われてる。俺は好きになった相手が男だったから、最初は悩んだんだ」 「ユウは、向こうに好きな相手がいたのか!?」  驚いた顔をするから、何だか不思議な気持ちになる。ジードも、そんなこと気にするんだ。くすくす笑うと、じっと見つめてくる。
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