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「いたよ。でも、気づいてもらえなかった。俺なんか、目にも入っていなかったと思う」
「……やはり、女神に感謝しなくては」
俺が首を傾げると、ジードが真剣な顔で言う。
「ユウを、俺以外の者の目に、とめないでくださった」
「……」
俺は思わず、膝に乗せていたクッションを、ジードの顔に押し付けた。
ジードが、ぐううと唸っているけれど、埋まってろ! と思う。
ずるいだろう、こんなの。
……何なんだよ、ほんとに。
そんな言葉を聞いてしまったら。
あんなに辛かった失恋が、間違いなく浮かばれてしまうじゃないか。
……都合よく、この恋の為だったかもと、思ってしまうじゃないか。
「ユウ?」
ジードがクッションをはがして部屋の隅に放り投げる。ベッドに上がってきて、俺を膝の上に抱え上げた。
悲しくて泣いてるんじゃないから心配しなくていい。そんなに心配そうに覗き込まなくていい。
……ジードに会えたことが、嬉しいだけだから。
大きな体でぎゅっと抱きしめてくるから、涙が止まらなくなるんだ。
ジードの首に両手を回して抱きつくと、黙って背中を撫でてくれる。頬に伝う涙を手で拭って、そっと触れるだけのキスをしてくれる。
――……俺は一生、この騎士にかなわない。このあたたかい腕を、もう二度と離せそうにない。
目の前にあったジードの親指を軽く噛んだら、急に困ったような顔になる。
「ユウ。その……」
小さな声で、もう少し触れていいかと聞かれた。あんまり真剣だから、返事の代わりにキスを返す。重なる唇は涙を含んでも甘い。
「ユウは、泣いている姿も……綺麗だ」
「……興奮する?」
いつか聞いた言葉を思い出して聞いた。目を瞬いた騎士は少しだけ頬を赤く染めた。
一枚ずつ丁寧に服を脱がされる。何だか大切にしないと壊れてしまうとでも思っているみたいだ。肌に唇が優しく触れる。触れられた場所はすぐに熱を持って、体に甘い痺れが走った。鎖骨の下を柔らかく吸い上げられると、じんと下半身が疼く。
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