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1.イケメンと魔獣
異世界に、来た。
何のひねりもないセリフだが、本当にそのままなのである。
中間テストで一週間、部活動は休みになる。テスト前最後の部活があるからと、土曜の朝、いつも通りに家を出た。
俺の入っている家政部は、男子校にも関わらず活発な活動で名を知られている。家政部は料理班と手芸班に分かれているが、俺は料理班だ。
今日は入部したばかりの1年生たちにフランボワーズのムースケーキを披露する日だ。高校の駐輪場に着いてチャリを停める。前カゴから下処理済みの材料の入った保冷バッグを取り出して、部室である家庭科室に向かう。
その時だ。踏みしめていた大地が、そして空気が、ぐらぐらと揺れた。
「地震?」
慌てて周りを見ても、休日の為に人はいないし、スマホの緊急地震速報も鳴らない。
もしかして、揺れているのは俺? 貧血だろうか? 昨夜遅くまでケーキのレシピを確認していたし、確かに連日寝不足だった。揺れはおさまらず、耳の中と胃がおかしくなる。とりあえずしゃがみこんだ。うー、と唸ってうつむいていたら、誰かが俺の肩を掴んだ。
「⋆⋆⋆⋆⋆⋆⋆⋆」
聞いたこともない言葉が聞こえてくる。
目を上げたら、少しくすんだ金髪と碧の瞳が目に入った。あれ、うちの高校、交換留学生なんて来てたっけ? 日に焼けた肌に、彫りの深い顔立ち。思わずまじまじと見れば、眉が少しだけ下がって、二重瞼のくっきりした瞳が優しく俺を見た。
「⋆⋆⋆⋆ !!!」
目の前のイケメンが、急に大声で何か叫んだ。頭の上が陰った気がする。ふっと見上げれば、丸い穴があった。
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