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「スフェン! こ、これ、すごく甘い」
「ああ、それはロワグロの実だ。今日の為に取り寄せた」
「⋯⋯よく手に入ったな。こんなに甘いロワグロは初めてだ」
白くつるりとした実は瑞々しくて、まるで、砂糖を舐めたような甘さだ。こちらに来てから、砂糖のようにはっきりした甘さのものを食べたことがないから、より甘みを強く感じる。
「こんな果実があるなら、砂糖の代わりになるかもしれない」
「ユウ、これはすごく珍しい果樹の実なんだ。しかも大層出来がいい。公爵家だから手に入るような品だ」
「じゃあ、気軽には手に入らないのか」
期待で膨らんだ心が、一瞬でしぼむ。
「ユウの言う『砂糖』とは、どんなものなんだ?」
スフェンが興味津々といった顔で聞いてくる。俺は必死で説明した。植物からとれたもので保存性が高く、様々な料理に使われていることを。
「俺の世界では、今みたいな食事の最後には、果実や砂糖を使った甘い料理が出てくる。それを食べると、みんな幸せな気持ちになるんだ」
黙って聞いていたジードが、眉を顰めながら口を開いた。
「一つだけ、ユウの言う『砂糖』に近いものに心当たりがある。このロワグロよりもさらに甘い」
「えっ、どんなの?」
この世界には、他にも砂糖に近いものがあるのか?
俺の真剣な目に、ジードは頷いた。
「魔獣の中に、巨大植物の形状で甘い香りを放ち、近づけば体液を放って獲物を捕らえるものがいる。核を潰すと死んで硬質化するが、死骸には脳が痺れるほどの甘さがある」
「そ、それ、食べても平気なやつ?」
「死んでいれば問題ない。うまく死骸が手に入れば、かなりの高値で取引されているからな。ただ、南部の魔林にしか存在しないし、死骸は滅多に手に入らない」
「なんで?」
「あっという間に他の魔獣に食い尽くされるからだ」
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