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「前に俺を襲った奴は、王都にはいない生き物なんだよね?」
「あれはルノルワと言って、北部の湿地帯に棲む魔獣だ。陽射しが苦手だから、本来は昼間に現れることもない。たまたま揺れに巻き込まれて出てきたんだろうな」
「⋯⋯ジードはさ、どうして第三騎士団を希望したの?」
貴族出身の騎士たちは、大抵は王族を守る近衛か、王都を守る第一騎士団を希望する。危険性の高い辺境専門の第三騎士団を希望する者はほとんどいないと聞いた。
「貴族学校で、俺は少々浮いていたんだ」
ジードは、ぽつぽつと話してくれた。
祖父が冒険家気質のある男で、若い時は世界の各地を旅していた。三男だからと気楽に暮らしていたら、兄たちが次々に流行り病にかかって亡くなり、嫌々家督を継ぐ羽目になった。
「祖父は後を継ぐのが本当に辛かったらしくて、自分の部屋にたくさんの旅土産を置いていた。魔獣の骨だの剥製だの、異民族の石板だの。珍しい魔石の原石もあった。孫の中で、その部屋に入ったのは俺だけ。祖父の話を聞くのが好きだったし、貴族社会に生きるよりも、魔獣たちと体を張って戦ってみたかった」
⋯⋯ジードが第三騎士団を希望したのは、祖父の影響だったのか。
俺も母方の祖父が好きだったから、なんとなくわかる。じいちゃんは狩猟免許を持っていて、山で増えすぎた鹿や猪をよく仕留めていた。冬は鍋を作ってくれたし、俺はじいちゃんの話を聞きたくて、長い休みになると一人でじいちゃんの家に向かった。そんな話をすると、ジードは目を輝かせた。
「ユウの世界でも、祖父殿は人々を守るために戦っておられたんだな」
「⋯⋯いや、そこまですごい話ではないと思うけども」
祖父も地域の為に頑張っていたとは思うが、流石に魔獣と戦うレベルではないだろう。
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