7.決心と牽制

4/4
前へ
/198ページ
次へ
   エリクは俺の体調を気にして顔を出してくれたらしい。そんな言葉を聞いたら、ちょっと泣きそうな気持ちになる。エリクは俺の顔を見て安心しましたと笑って、楽しそうに机の上を見渡した。 「たくさんありますね。あ、スロゥ! 美味しいですよね」 「エリクも好きなの?」 「はい、好物です」 「じゃあ、一緒に食べよう。時間ある?」  思いがけず、三人で試食会が始まった。  エリクが参加してくれたおかげで、遠征する騎士たちの話も聞くことが出来た。果物は貴重な栄養源で、もっと携帯できればいいが、長くもたせるためには魔石が大量に必要で難しい。  ⋯⋯何か、もっと方法があればいいのに。  味見が目的ではないのに、予想よりもたくさん食べてしまった。これじゃあ、昼食が入らないと互いに笑う。エリクがもう騎士棟に戻ると言うので、王宮の端まで一緒に歩いた。 「ユウ様、よかったら今度、騎士たちの模範試合をご覧になりませんか? ユウ様がいらしたら、皆喜びます」 「えっ。でも、俺⋯⋯、騎士棟に近づくなって言われてるから」 「それは誰にです? 何かあったのですか?」  前に騎士棟に行った時のことを話すと、エリクは眉を顰めた。 「少し、誤解があるようです。騎士は少々態度に問題のある者もおりますが、ユウ様に無礼を働けるような者はおりません。仮にそんなことがあったら、すぐに団から除名になりますし」 「⋯⋯そうなんだ?」 「異世界人の保護と安全は我々の責務です。それを侵すものは騎士ではない。センブルクには私から注意しておきましょう。誤解を促す言い方をした彼に非があります」 「エリク! ジードを責めないで欲しいんだ。⋯⋯俺、そんなつもりで言ったんじゃないよ。ジードは心配してくれたんだと思う」  思わずエリクの手を掴んで、必死に言った。俺の言葉でジードの立場が悪くなるのは嫌だ。 「心配⋯⋯ですか?」  エリクの呟きに、俺は強く頷いた。 「私は少し違う気がします。まるで、彼は他の騎士を牽制しているようだ」  ──⋯⋯牽制? ジードがそんなことをするわけがない。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1390人が本棚に入れています
本棚に追加