8.仲違いと後悔

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8.仲違いと後悔

「エリク。大体、ジードが他の騎士を牽制する理由がないよ」 「⋯⋯ユウ様は十分、魅力的な方ですよ。ご自分のことはわからないものかもしれませんが」  エリクの声音は穏やかだが、言われたことは信じがたかった。こちらに来てから声をかけられたことは何度もあるが、どれも異世界人へのもの珍しさからだとしか思えない。 「俺のこと、真剣に心配してくれる人はレトやジードぐらいなんだよ。だから!」  頼む、という気持ちだった。ずっと親切にしてくれた友達に迷惑はかけたくない。エリクは何か言いたそうな顔をしていたけれど、黙って頷いてくれた。 「わかりました。今回は何も申し上げずにおきましょう。でも、私もユウ様のことを心配しています。何かあったら、いつでも仰ってください」 「⋯⋯ありがとう」  エリクの言葉に、緊張が一気に解けていく。ほっと胸を撫でおろした時には、すぐ近くに人が立っていた。 「ユウ? こんなところで、何を⋯⋯」 「ジード!」  今まさに話していた相手が登場して、俺はうろたえた。騎士棟から繋がる渡り廊下を歩いてきたジードは、おそらく俺たちと昼食をとろうと思ったのだろう。わずかに眉を寄せ、口を引き結んでいた。まるで挑むような瞳をしている。  ジードの視線は、ただ一点に向かっていた。そう、俺がエリクの手をしっかり握っているところに。 「あれ? わ、わわっ!」  慌てて手を離そうとすれば、なぜかエリクはぎゅっと力を籠めて、強く握り返してくる。 「ユウ様、今日はとても楽しかったですよ。また是非、お声がけください」 「あ、うん、こちらこそ。突然誘ったのに付き合ってくれて、ありがとう」  エリクがジードに目を向ければ、ジードは素早く脇に退いて礼をする。それに軽く視線だけ返すと、エリクは騎士棟に向かって歩き出した。後に残されたのは、俺たち二人だけだ。今まで感じたこともないほど、俺たちの間には、気まずい空気が漂っていた。 
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