1.イケメンと魔獣

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 レトが目を細めてぼそりと呟く。ジードは耳を傾ける様子もない。  レトによると、騎士たちは騎士団専属の食堂で食べるものらしい。騎士が王宮職員の食堂で食べていけないことはないが、盛られる食事の量が断然違うのだそうだ。確かに、ジードはいつもあっという間に食べ終えてしまう。  初日に俺を助けてくれた碧の瞳のイケメン、ジードは本当に騎士だった。王国の騎士団の中でも辺境専門の第三騎士団の所属で、久々に王都に戻ってきたという。一年のうちの大半は辺境で魔獣を相手にしていると言っていたから、俺の頭の中では遠洋漁業の漁師と同じ認識になっていた。 「ジードは、まだ当分王都にいる?」 「もう一か月は王都暮らしだ。その後はまた辺境だが」  そう言って、ちょっと眉を顰めている。視線を感じたので相変わらず綺麗な瞳だな、と見返すと、ふっと目を逸らされた。  レトが俺たちを交互に見ながら言った。 「第三騎士団はなかなか王都に戻れませんから、こうしてご一緒に食事ができるのも貴重な機会でしょう。ユウ様もだいぶこちらの生活に慣れてこられましたし」 「うん⋯⋯。ねえ、レト、俺ずっとここにはいられないよね」 「そうですね。客人の様子や希望次第ではありますが、王宮で一通りの知識を身に着けた後は、王室から委託を受けた後見人の元に移ることになります。ユウ様のご後見には、何人もの貴族が名乗りを上げておられますよ」  ガタッと音がして、ジードが立ち上がった。 「⋯⋯片づけてくる」  ジードはようやく食べ終わった俺の食器と自分の食器を手に取った。食堂を大股に歩いていく騎士の背に、ちらちらと熱い視線が送られる。イケメンはやはり、どの世界でもモテる。 「ジード、どうしたんだろう?」 「ユウ様のご後見を心配しておられるのだと思います。ジード様はまだ18。御身分はまだしも、ご自分が後見人になる年には足りませんしねえ」 「えっ! ジードって18なの? 俺と一つしか変わらないの?」  まさか、そんなに年が近いとは思わなかった。顔立ちも体格も全然違うし、ずっと落ち着いているように見えたから。
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