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2.公爵令息とレシピ
「私はユウ様が17だということに驚きますが⋯⋯」
それは散々言われてきたからよくわかっている。もっと年下に見えるらしい。
この国の人たちは総じて背が高くて、体つきもがっちりしている。俺は身長が180センチあるが、ここでは成人女性と同じぐらいだ。男性は2メートル前後で、騎士なら大抵はもっと高い。
中学時代はバスケ部だったし、高校で念願の家政部に入ったとはいえ筋肉はそこそこ付いている。別に貧相な体つきだとは思わないが、こちらの女性の方が俺よりよほど逞しく見える。おかげで、日本なら背が高めの男子高校生のはずが、ここではまるで、女子のような扱いだ。
昼食後は昼休みが終わるまで、ジードと二人で庭園を散歩した。王宮の庭園は広すぎて、毎日散歩しても、全部見終わることはない。俺たちは大抵、噴水の前の芝生に腰を下ろす。
あたたかな陽射しの中にいると、まるで全てが夢みたいだ。
最初はパニックになって泣いたこともあったけれど、段々仕方ないと思えてきた。朝起きても、スマホのアラームが鳴ることも、母や姉たちの声が聞こえることもない。それに、あきらめるのはまだ早い。途方もない金がかかるとしても、魔術師に頼めば、いつかは帰れるかもしれないんだ。
こちらで通用するかはわからないが、俺には特技があった。それでうまく金を稼げれば⋯⋯。そう思ってからは、少しずつ前向きにものが考えられるようになった。
「⋯⋯ユウ」
「ん? 何、ジード」
「さっきの⋯⋯、後見の話なんだが」
「ああ。レトはたくさんの貴族が、って言ってたけどまだ何も決まってないんだ。ただ、王宮から出ろって言われたら、さっさと出ないとな。正直、後見を引き受けてくれるなら誰でもいい」
「ユ、ユウ! それならッ!」
ジードが、ぐっと体を近づけてくる。鼻先が触れそうな勢いだ。いくらなんでも、近すぎるだろ。
「ちょ、ちょ⋯⋯」
「ユーウ!!」
思わず芝生の上を後ずさると、自分を呼ぶ声がする。晴れやかな声が聞こえて、後ろに供を連れた一人の男が庭園を歩いてくる。
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