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「ごめんね。罠だったんだ」
「わかってたから別にいい」
「でも相棒、これからどうするんだ? 縄を解かないと俺達は動けないし、きっとこいつらはそれを待ってくれない」
「そんなのやることは1つだろ?」
俺はそう言って永遠子ちゃんと大地を庇う為に前に進み出た。口角を引き上げ、黒のグローブをした拳を打ち鳴らす。
「……お霊参りに上がりました」
喧嘩屋として霊と対峙することを選んでから、俺は勝負の時に必ずこの言葉を使う。呪文のように、自分に言い聞かせる為に、俺は俺を奮い立たせる。
村人は黒と白の面が5人ずつ。10人対1人。上等だ。このくらいのピンチを切り抜けなければ俺はこの先、永遠子ちゃんを追い抜くことはできない。
突っ立っていた村人は、俺が走り出すのと同時に俺目掛けて突進してきた。殴る仕草をする村人もいたが、操られた人形のようで拳に力が入っていない。
俺は1人、また1人と村人の面に拳をぶつけていく。右手の動きが鈍くなってからは左手も使い、10人の村人をのした時には、俺の両腕は真っ黒に染まっていた。
視界が霞んで足元が覚束ない。かつてないほどの疲労感に『お面の怪異』の強さを思い知った。
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