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相談役は頭に付けていた鬼の面を手に取り、その表面をそっと撫でた。
「息子はね、本当に立派な子だったの。それなのにいわれのない罪で周囲から責められて、それを苦に自殺した……。悲しい、なんて言葉じゃ私の気持ちをあらわせない。なんで、どうして……と、息子を救えなかった自分を何度も責めたわ」
「いわれのない罪、ね」
イベントに来るまでに調べた情報の中で、浦川議員の汚職内容を見た。賄賂に不倫にセクハラと内容は多岐にわたる。どれも確かな情報源からだから信用できるもの。
「あんたは息子を信じてたんだな」
「ええ、当たり前でしょ」
「……真実から目を逸らすなよ。あんたの息子は確かに罪を犯した。罪を償わずに逃げたんだよ」
「……清水さんが息子と似ているのは顔だけね。中身は最悪だわ」
「そりゃどーも。犯罪者と中身まで似ていたらやってらんねぇよ」
相談役が俺を見る目が変わった。それに呼応するように鬼の面から黒い靄が沸きでる。腕の痛みも増し、額から流れる汗の量が増えた。
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