最終章 お霊参り

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 俺は拳を打ち鳴らす。視界が揺れて狭まっていく。だが、ここで倒れるわけにはいかない。  たとえ俺が倒れたとしても、永遠子ちゃんなら簡単に鬼の面を破壊することができるだろう。相談役の言葉通りなら、俺が全快の状態ならなんなく破壊できたということ。  鬼の面にとっての俺は力を増強させる為の餌というところだろう。どいつもこいつも反吐がでる。 「自分の欲望のままに好き勝手しやがってさぁ……。周りを巻き込んで、大勢の人間を殺した。あんたはなんとも思わないのかよ?」 「私だって関係のない人を巻き込むのは心が痛いわ。けれど仕方がないじゃない。息子を蘇らせる為には犠牲が必要だったの。あなただって大切な人を失えば私の気持ちがわかる時がくるわよ」 「俺には一生理解できない考えだな」  これ以上の会話は不要。相談役は心底狂ってる。宿の部屋で涙を流していた女性を思い出した。  ただバイトをしに来ただけなのに巻き込まれ、命を奪われた。きっと家に帰れば彼女を想う人達がたくさんいたはず。  彼女だけじゃない。イベントに参加した人達だって、これから先の長い人生を歩みたいと思う相手とともに希望を持ってここに来たはずだ。  それなのに、顔を奪われ、命を奪われ、誰も気づかないような穴に捨てられた。
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