最終章 お霊参り

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「なにを……あぁ!!」 「くそっ」  あと少しで鬼の面に手が触れる瞬間に、相談役が自ら鬼の面を被った。糸が切れたようにだらんと腕を下げた相談役は、俺に向かって腕を伸ばす。  老人とは思えない強さで首を掴まれ地面に叩きつけられた。すぐに鬼の面は俺に馬乗りになって動きを封じてくる。 「相棒!!」  大地の声が聞こえるが、返事をする余裕がなかった。ただでさえ立つことすらままならなかったのに、今の衝撃で体中の力が抜けてしまった。鬼の面は目と鼻の先で俺を凝視する。 『油断したなぁ……人間』 「お前喋れるのかよ」  鬼の面から発せられるのは、他の面と同じ合成音声だ。本来は動くはずのない面の口が人間の口のように動く。 『人間にとりつけば造作もない。ただ、やはり歳をとった人間は脆いなぁ。体の主はもう死んでしまった』 「っは、よく言う。俺に破壊されるのが怖くて自分でやったことだろ」 『それもそうだ。はっはっは』  鬼の面は嗤いながら手の力を強めていく。気道が狭まり、呪いではなく酸欠で視界が霞んできた。
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