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俺の横を黒い靄が、鬼の面に顔を喰われた人達が通り抜けていく。人が地面に倒れる音を聞きながら、俺は口角を引き上げた。
「お前に恨みを持つのは生きてる人間だけじゃない。人間の意思と顔を奪い、命すら弄ぶお前にふさわしい最期をくれてやる」
拳を鬼の面に叩きつける。何度も、何度も。鬼の面の被害者達の分を数えたら百発でも足りない。グローブ越しに鬼の面の破片が突き刺さるが、それでも俺は止めなかった。
『や、やめ――』
鬼の面に入った罅は全体に広がり、粉々に砕け散った。この世に二度と復元されないように、俺は力を込める。
面の下から出てきた相談役の顔だった部分は、ぽっかりと赤黒い肉片になっていた。
「終わった……」
ぐらりと体が傾いて俺は倒れそうになる、が、俺の背中を誰かが支えてくれた。
「相棒、大丈夫か!」
「大地……」
顔を見なくたって声と行動でこれが大地だとすぐにわかる。霞む視界の先で、大地の後ろに永遠子ちゃんが見えた。
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