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「はぁ……。大地といれば変わることもあるだろ」
「そういうもの?」
「そう」
大地と永遠子ちゃんが恋人役として現れた時、2人が試練をこなしていく時、俺は上手くいえないが、正直に言うと面白くなかった。
そうしてようやく気付いた。永遠子ちゃんへと向けるこの気持ちの正体を。憧れから変わった感情を。
「俺だって日々成長してるんだよ」
「ふーん? じゃあさ、タクくん」
そうして永遠子ちゃんはいつも俺に言う言葉を向ける。
「いつか、私のことを追い抜いてね」
「当たり前だろ」
バスが静かに動きだし、3日間を過ごした村が窓の向こうへと通りすぎていく。ぼんやりと眺めていると、1人の人間が村の門を越えていくのが見えた。
白髪の長髪、黒のマントを翻し、ステッキを突く姿に一瞬老人かと思う。が、風が吹いて見えた横顔は若く、軽い足取りで山道を登っていく。永遠子ちゃんの仕事仲間だろうか。じゃなければあの村に向かう人間なんていない。
「タクくん、どうかした?」
永遠子ちゃんに呼ばれて一瞬目を離した隙に男はいなくなっていた。
「いや、なんでもない」
こうして、多くの犠牲者を出した怪異は幕を閉じる。新たな謎を残して。
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