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ミカエル
「そうです。大天使ミカエルを呼ぶ言葉です。『偉大な大天使ガブリエル、いわゆる神の使者、聖ミカエル、私はあなたを私の前に連れて行きたい。聖ミカエル、私はあなたを私の後ろに連れて行きたい。聖ミカエル、私はあなたを私の右に連れて行きたい──聖ミカエル、私はあなたのすべての光と保護が私の中にあることを望む。最愛の聖ミカエルよ、今ここに現れてください!』」
ミカエルが来た、の意味が呑み込めなかったが、なにかが起こってこの子たちが救われたことは確かなようだった。
「きりんさんがぁ」
愛弓の話はこうだった。キリンが毎回話しかけてくるのだと。
「みかえる」と笑いかけてくるのだと。ミカエルってなにかと訊いたら、愛弓は知らないと答えた。
こうして魔女狩りは終わり、二度と招待状が届くことはなかった。あれが魔女狩りであったとはとても思えない。戻ってきた子供たちはみな、とてもやさしい波動を放っていたから。
だからきっと、魔女ではないなにかを刈り取ろうとしたのではないだろうか。それがミカエルなのかもしれない。
「キリンさんにいく」お休みの度に愛弓は目を輝かせる。この子はきっと、ひとりで回転木馬に乗ったあの日のことを忘れてしまう。
そして知ることもない。
──キリンさんに乗ったミカエルが来た。とノンちゃんが指さしたのが愛弓だったことも。
─fin─
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