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みかえるが来る前に
──秘匿、隠匿、隠蔽、淫靡。なんと麗しき言葉たち。
忍びやかに、すべてを被い隠すベルベットの波。生まれた闇はあらゆる感覚を鋭敏に研ぎあげ、開放と放熱と快楽に人びとを沈める。
──翻って光はどうだ。醜い月は秘めごとを笑い、覚醒を要求する太陽は、あらゆるものを白日の下に晒す。光は弁解の余地を奪い、弁明を嘲笑うかのごとく照らすのだ。
──忘れてはならない。闇は光の副産物ではないということを。銀河に遍くある暗黒物質は、見えないもの、漆黒こそが真実なのだと教えている。一切のものの、ありのままの姿が闇なのだ。
──真理への回帰。静かなる憧憬。我々はなにがあろうとも復活しなければならない。秩序をもたらすために、急がなければならない。
〈生きとし生けるものはすべて、光を求めるように創造されている。それが自然界の摂理。闇は無明。もしかして、きみたちはそうなの? だとするなら、手出しは無用〉
──急がなければならない。みかえるが来る前に。
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