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きみちゃんはどんどんぼろぼろになっていった。可愛らしい顔はあざで紫色になり、痩せ衰えて骨と皮みたいになっていった。目つきは悪く、いつも俯いてじっと誰かを睨みつけていた。でも、僕を見る時だけは一瞬だけその視線がゆるんだ。まるで助けを求めるように。
きみちゃんはよく家を閉め出されていた。服を全部脱がされ、あざだらけの体で必死に扉を叩いていた。ごめんなさいごめんなさいおかあさんゆるして。いれてくださいおねがいします。そんな声が毎日のように聞こえた。そんな時にきみちゃんの家の前を通ると、きみちゃんは泣きながら僕の方を見た。ねえたすけて。濁った瞳がそう言っていた。
きみちゃんはそれから、僕の家の扉も叩くようになった。家が隣だったから。たすけてくださいおねがいします。毎日毎日扉を叩いた。でも母さんも僕も、聞こえないふりをした。一度きみちゃんを助けようとした人が、きみちゃんのおかあさんに酷いことをされたのを知っていたから。
きみちゃんは死んだ。きみちゃんは暑い暑い夏の夜、いつものように家を閉め出されて死んだ。きみちゃんはまた、助けを求めて僕の家に来た。何度も何度も僕の家の扉を叩いた。ドアノブもガチャガチャ鳴らした。僕は耳を塞いで布団にくるまっていた。
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