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凪早町を渡る熱い風。昼の熱を吸い込んだ大気が、照り付ける太陽光ごと町中を満たす。汐の匂いが畳に寝転ぶ聡太の鼻をかすめた。ぴくりとまぶたが震える。
「あんた早う宿題しなあ」
縁側で洗濯物を取り込む母親の声が眠りを覚ました。
同時に扇風機の廻る音と蝉の鳴き声が一気に押し寄せる。
聡太は不承不承起き上がり目を擦った。
「…ねみい」
なんで寝てるときは何とも思わないのに、目覚めるとこんなにも暑くて汗が滴っているのか。
冷蔵庫からアイスバーを取り出すと、ぺたぺたと歩きサンダルを履く。
「聡太宿題は?どこ行くん」
「うーみ。遊びじゃないよ。自由研究やから」
そういって自転車に乗って海へと続く坂道を一気に駆け下りた。
汗と気怠さと、なんていえばいいか分からない気持ちを残らず後ろに落としていけないかと思った。
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