優しいひと

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優しいひと

クラスを探すため、組み分けの表を見ながら右往左往していた私は、つい勢いあまって 『 ドンッ 』「 あ、ごめんなさい! 」誰かとぶつかってしまった。 焦ったりすると前が見えなくなってしまう性格だから、気をつけていたのに、結局、初日からやらかしてしまいました。 その拍子に、もらったプリントをブチまけちゃって、それでもって廊下を歩く生徒達に踏まれる踏まれる、かわいそうなプリントさん、ごめんなさい… 最後の一枚を拾おうと、短い腕を伸ばした。 『 よいしょ 』 「 あ!」 プリントは自ら私の目の前に浮遊した、なわけないですよね、誰かわからないけれど拾ってくれたみたいで、それが私の目の前に差し出された。 「 これ、君のだよね 」 「 うん あ、ありがとう… 」 「 足跡ついちゃったね、端っこ破けてるし… 」 「 私、ドジなので…は、はは… 」 「 同じC組だね… ちょっと待ってて… 」 「 …はぃ?…」 その人は何やら自分の封筒をのぞいていた、すると、中から一枚のプリントを引き抜いた。 「 それ、貸して 」 「 は、はい 」 その人は、私の手から足跡付きのプリントをつまみ上げると、それを自分の封筒にしまいこんだ。 「 君には、綺麗なほうが似合うから、…じゃあ! 」 「 あの…… 」 そう言いながら、笑顔で私に綺麗なプリントをくれたその人は、あっと言う間に行ってしまった。 なんて優しい人!? 綺麗なほうが似合うって言われた… 少し舞い上がった私は、廊下でそのまま余韻に浸っていたのでした。 「 新入生の方!早く教室へ入ってください!…今から説明があります… 」 「 あ…はい、すみません… 」 いつの間にかみんな教室へ入ってるし、残るのは私ひとりじゃない… とりあえず入ってみましょう、ピタピタピタ… 知っている人が誰もいませんね~ 当然です。 前の中学校からこの場所は500kmは離れていますから、いたら怖いわ。 父の転勤に伴い、遠くの地から引っ越してきたのですから、誰ひとりとして知り合いなどいないはず、寂しい限りです。 それよりもさっきの優しい人が気になる。
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