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「な…いつから?」
「管理栄養士になるってところから」
つまり、今までの話は大我君に全て丸聞こえだったという事。
「起きてるなら、言ってよ!」
「俺、起きて数分は使い物にならねぇの知ってるだろ?」
大我君は確かに、寝起きが良い方ではないが、ニヤニヤした顔を見ていると。意識がハッキリした状態で私と亜実ちゃんの話を聞いていたのだろう。
「俺は結の事大好きなのになぁ~」
大我君はそう言って、悪い顔をしながら。立ち上がった。嫌な予感がした私はその場から立ち去ろうとしたが…ずっと正座していたので、足が痺れ。その場から動けずにいた。
「逃げんなよ~」
大我君はそう言って、私に近づいて。ギュっと抱きしめた。
「こんなに愛してるのに?結は欲しがりだな~」
力強く私を抱きしめながら、大我君は私の顔をまじまじと見ている。私が恥ずかしさで目を逸らすと…大我君は大きく溜息をついた。
「悪い…寂しい思いさせて」
大我君はそう言って、私の肩に自分の顔を押し付けて。グリグリと押し付けてくる。その姿を見て、あることを思い出した。
そう。大我君はずっと、私の事が大好きなのだ。確かに、私は言葉で言ってくれないと分からないし、不安になる。だけど。大我君はいつも、言葉の代わりに態度で私への愛を示してくれていた。それだけでも充分愛が伝わっていた。
昔は、常にムスっとした顔で。私に甘えてくることもなかった。弱いところも見せてくれなくて。限界まで弱った時じゃないと、私に頼ってくれなかった。
付き合ってから。どんどん、私に甘えてくれるようになり、よく笑って、弱いところも、私に見せてくれる。
それが、彼が私を愛しているという証明になるのに、すっかりその事を忘れていた…
「大我君…ずっと一緒にいようね」
「…当たり前だ」
大我君の頭を撫でると。大我君は嬉しいのか。益々力いっぱい私を抱きしめた。
「あの~そろそろ寝ますよ~」
亜実ちゃんの一声で我に返る私達。大我君は不満そうな顔で亜実ちゃんを睨みつけている。
「大輝~ほら、もうベット行くよ~」
大輝君を起こす亜実ちゃん。でも、大輝君は中々起きようとしない。
「おい、俺らは先に寝ようぜ」
さっきまで寝ていたというのに、大我君はまた眠くなってきたようだ。
「先に寝て良いよ。多分、大輝。まだ起きないし」
亜実ちゃんの言葉に甘えて、私達は一足先に寝室へ向かう事にした。
「おやすみ、亜実ちゃん、大輝君。悩み聞いてくれてありがとう」
「こっちこそ、ありがとう」
その時、亜実ちゃんの顔はどこか、寂しげに見えたのは。きっと気のせいだ。
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